不安2「システム構築に多額の費用がかかるのでは?」を解消する

ビッグデータ活用に必須! あなたが知らないOSSの実力

日経BPイノベーションICT研究所
上席研究員
田中 淳

この連載では、ビッグデータをこれから本格的に活用したいと考えている方々を対象に、ビッグデータ活用に関する6つの不安を取り上げています。それらの不安を解消し、ビジネスの価値を最大化するためにビッグデータをどう活用していけばよいのかを、皆さんと考えていくのが狙いです。

取り上げるトピックは以下の通りです(内容は変わる可能性があります)。

不安1:ビッグデータに今から取り組むのは遅すぎないか(掲載済み)

不安2:システム構築に多額の費用がかかるのでは?(今回)

不安3:AIやIoTの活用イメージを描くのが難しそう

不安4:既存システムをガラリと変えないと実践できないのでは?

不安5:プロジェクトマネジメントの進め方は従来通りで大丈夫か

不安6:ビッグデータを扱うエンジニアを自社で育成できるのか

連載の主読者として、ユーザー企業(ITを活用する側の企業)でITの導入に関わる意思決定を担う、あるいは補佐する立場にあるIT部門のマネジャーやリーダーの方を想定しています。本連載では、「量が多い(量が多くなると予想される)多種・多様なデータ」そのものや、これらのデータを扱う取り組みをビッグデータとしています。

前回は、「不安1:ビッグデータに今から取り組むのは遅すぎないか」を取り上げました。ブームとしては落ち着きつつあるものの、日本企業がビッグデータ活用に本格的に取り組むのはまさにこれからであり、ビッグデータは「競争力を高めるIT」の中心にあるという点を説明しました。

ビッグデータ活用の重要性は分かる。ただ、システム構築に多大な費用がかかるのではないか。それでは、なかなか手を出しにくい──。このような不安をお持ちだったり、経営層や上司からこうした懸念が出てくるケースもあると思います。今回は話を一歩進めて、システム構築コストを取り上げたいと思います。

ここで中心トピックとして取り上げるのは「OSS(オープンソース・ソフトウエア)」です。こう言うと「なぜいきなりOSS? そうか、タダで使えるしな」などと思われるかもしれません。

確かに「無料(フリー)で利用できる」というのは、OSSの大きな魅力です。OSSでは、商用ソフトウエアのようなライセンス費用はかからないからです(注1)。大規模のシステムでは、ソフトウエアのライセンス料だけで膨大な金額になるケースも珍しくありませんから、そのぶん、OSSによるコストメリットは大きくなります。

注1:インストールを容易にしたり、企業での利用に必要な各種機能を追加したりしたOSSのディストリビューション(配布用パッケージ)は、有償で提供される場合があります。

ただ、コスト削減は、OSSで得られるメリットの一部にすぎないという点を強調しておきます。ライセンス費用は商用ソフトよりも下がりますが、必要な機能を追加・修正した結果、商用ソフトを利用する場合よりもかかってしまうケースもあります。

それよりも注目すべきなのは、ビッグデータ活用でOSSが非常に大きな役割を担っている点でしょう。「OSSなしにビッグデータの導入は困難」と言っても、言い過ぎではないと思います。

ビッグデータ活用を狙ったシステム構築コストの抑制策を考える際には、「OSSでコスト抑制を狙う」というよりも、「OSSの利用を前提にコスト抑制策を考える」やり方が基本になります。前置きがやや長くなりましたが、今回はビッグデータ活用でOSSが果たす役割をまず見たうえで、OSSを生かしたビッグデータ活用システムを構築する際に考慮すべきコスト抑制のポイントに触れることにします。

日本企業でのOSS導入率は約3割

OSSについて、簡単におさらいしておきます。OSSはざっくり言うと、ソフトウエアの設計図に当たるソースコードを公開し、自由に改変・配布できるようにしたソフトウエアを指します(注2)。

注2:OSSの詳細な定義については、例えばOpen Source Initiativeの定義をご覧ください。日本語訳はこちら

日本でOSSが話題になるきっかけを作ったのは、UNIX互換OSの「Linux」でしょう。1990年代からシステムのオープン化の波とともに、企業・組織での利用が始まりました。現在は、銀行の勘定系システムのような高い信頼性が要求されるシステムでも利用されています。企業分野ではその後、データベース・ソフトウエアの「MySQL」や「PostgreSQL」などのOSが注目を集めました。

調査会社のIDC Japanによると、OSSを利用している日本企業は全体の約3割(31.3%)(注3)。この利用率をどう見るかは意見が分かれると思いますが、日本企業にOSSはそれなりに定着していると言えるでしょう。

最も利用率が高いのはやはりLinuxで、OSS導入企業の67.3%が使っています。次に使用率が高いのはMySQLで53.1%。アプリケーションサーバーの「Tomcat」(35.6%)、PostgreSQL(35.0%)が続きます。

注3:IDC Japan「国内企業におけるオープンソースソフトウェアの利用実態調査結果を発表」(2016年2月4日)


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