20th Anniversary

開発エンジニアが明かした20年の軌跡
時代や環境が変わっても、Biz/Browserは業務システムを支え続ける

業務システム向けビジネスUI実行ツール「Biz/Browser」。誕生からこれまでの20年間、多くの技術者が関わっています。
1998年の企画段階から参画し、現在も開発に携わっているプロダクトアーキテクトの大矢義憲と、2011年の入社以来、
開発を担当してきたエンジニアの三浦友輝に話を聞きました。

大矢義憲氏

株式会社オープンストリーム
プロダクト事業部
技術統括
プロダクトアーキテクト

大矢義憲

リッチクライアントの“先駆け”として誕生

1990年代後半、企業システムはクライアント/サーバーが主流でした。ただし、この場合、情報システム部門はアップデートの度に、全国の拠点に出向き、クライアントPC用のソフトウェアをインストールしなければなりません。運用コストが大きな負担になります。
その解決策として、採用されたのがWebシステム。端末にWebブラウザさえあれば、Webサーバーで一括管理できるため、保守はほぼ不要です。一方で、「Visual Basicで作り込まれたシステムからWebシステムになり、ユーザーからは使いづらいと声が上がっていました。そうした状況から、Visual Basicと同じ操作感を持つWebシステムを作ろうと考え、Biz/Browserのアイデアが生まれたのです」と、大矢義憲は振り返ります。
クライアント/サーバーの使いやすさと、Webシステムの保守性を両立させるという構想が評価され、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の助成金を得て、開発が始まりました。そして1999年11月には、ビジネスUI実行ツール「Biz/Browser」とその開発環境「Biz/Designer」のバージョン1が完成。他社のリッチクライアント製品が登場し始めるのが2001年であることを考えると、このリリースは極めて先駆的でした。
さらに2000年には、Biz/Browserバージョン2を、2001年末にはバージョン3と、矢継ぎ早に進化が続きます。「バージョン3は大幅にブラッシュアップされ、バージョン2とは別製品のようになりました。現在のBiz/Browserに近づき、リッチクライアント製品として本格的なスタートラインに立てたわけです」(大矢)。

三浦友輝氏

株式会社オープンストリーム
プロダクト事業部
製品開発部
開発グループ テクニカルエンジニア

三浦友輝

「使い勝手」から「安定運用」へとニーズが変化

バージョン3発売に合わせて社内用アプリケーションを開発。それを使ってクライアント/サーバーの使い勝手と、PHSの64kbpsという低速通信でも十分な反応スピードが出る実証デモを行いました。
これに注目したのが、計画中のWebシステムで操作性やレスポンスに課題を抱えていた東京海上火災保険(現・東京海上日動火災保険)様です。Biz/Browserならば使いやすく、レスポンスも確保できると判断して、業務システムをWebシステムで構築することになりました。
「この案件がブレークスルーで、そこからヤマト運輸様や第一生命様など、同様の課題を抱えている企業の採用が始まりました。もちろん苦労も少なくありませんでしたが、ひたすら開発を続け、楽しく充実していましたね」と大矢は笑います。
2000年代前半はリッチクライアント全盛でしたが、後半になると、通信回線は高速化し、Webブラウザの性能向上とWeb技術も発展します。これにより、HTMLベースのシステムは表現力、操作性、レスポンスが大幅に向上しました。その結果、リッチクライアントの優位性は次第に限られたものとなっていきました。
そうした中、企業にとって大きな課題になったのが外部環境への変化対応です。2010年代に入ると、OSやWebブラウザ、オープンソースが進化する速度も非常に速くなりました。Windowsも現在は、1年に2回、春と秋にバージョンアップが行われるようになっています。業務システムは、最低でも3年から5年、長ければ10年以上使うものなので、OSのバージョンアップに伴ってシステムの不具合が発生する可能性があるのは大問題です。
「我々の製品を使えば、OSなどの外部環境が変わっても、そのままシステムが動きます。かつてリッチクライアントとしてBiz/Browserを使っていたお客様たちが、長期的なシステムの安定運用にメリットを見出すようになりました」と三浦友輝は説明します。

ゼロベースで見直して「Biz/Browser DT」を開発

さらにBiz/Browserは、業務システムの開発に特化しており、不要な機能は省いています。システム構築も容易で、
長期間にわたって業務システムを使うことが可能です。こうしたロングライフバリューが評価されて、2010年代になっても、
Biz/Browserを導入する企業は減りませんでした。
「2011年には、メジャーバージョンアップした『Biz/Browser V』をリリースします。その時点で、10年以上の長い歴史を持つ製品でしたから、
Biz/Browserの世界を壊さないよう細心の注意を払いました。単純に最適解のみを考えプログラム改変を行ってしまうと、
利用中のお客様のシステムに影響を与えかねなかったからです」と三浦は明かします。
2010年代に入って、ハンディターミナルに加えて、タブレット端末の業務利用も急速に進み始めました。
2012年にはAndroidタブレット対応の「Biz/Browser AI」をリリース。その後、Androidだけでなく、iOSにも対応、
スマートフォンでも利用できる「Biz/Browser SmartDevice」も発売しています。
Biz/Browser VはPC向けBiz/Browserの集大成といえる製品ですが、2001年発売のバージョン3からの互換性の維持と動作保障を最優先したため、
ソフトウェア的には建て増しのような形で機能を追加しています。そのため、統一感や拡張性に課題があり、
アーキテクチャから設計までゼロベースで見直して新たに開発した「Biz/Browser DT」を2017年にリリースしました。

エンジニアとして「これからも進化させ続けたい」

今までのBiz/BrowserはWindows版を移植する形で、バージョンアップしてきましたが、
Biz/Browser DTは設計時点からマルチプラットフォームを意識して、iOS、Mac、Linux、Androidなどでも動作するように開発されています。
そのため現在では、様々なプラットフォームに対応した多数の製品を提供するに至りました。
最終的には全製品をDTベースのアーキテクチャで統一し、よりお客様の利便性を高めた製品群としての展開を考えています。
大矢は「10年ほど前、リッチクライアントブームが終わった際に開発を止めず、本当によかったと思います。
生産性が高く、長期利用できる業務システムのプラットフォームとして、まだまだ存在意義があるという判断は正しかったのでしょう」と力を込めます。
三浦も「現在のビジネスパーソンにおいて、働き方改革や労働人口の減少など、業務自体のあり方が大きく変わってきています。
お客様の声を聞きながら、それに対応する形でこれからもBiz/Browserを進化させ続けたいですね」と、明日からの仕事に対する抱負を語りました。

集合写真