ビジネス価値を最大化したいなら要確認! ビッグデータ、6つの不安を解消する

1987年、日経BP社に入社。「日経コンピュータ」「日経AI(後に日経インテリジェントシステム)」「日経ウォッチャー on IT Business(後に日経ソリューションビジネス)」「日経ソフトウエア」の記者・副編集長を経て、2007年「日経ソフトウエア」編集長。2013年10月から「日経コンピュータ」と日経BPイノベーションICT研究所 上席研究員を兼務。エンタープライズIT分野を25年以上担当。ITガバナンスやIFRS(国際会計基準)などマネジメントからプログラミングやアジャイル開発など実装技術まで、IT全般に関わる知識・経験を基に、ビッグデータや人工知能(AI)をはじめとするIT活用の高度化に向けた活動をウォッチ・支援する。

不安1:ビッグデータに今から取り組むのは遅すぎないか

この文章をお読みの皆さんの中で、「ビッグデータ」という言葉をご存じないという方はほとんどいないと思います。情報システムの企画や開発、改修、運用などに携わっているIT(情報技術)関係者に限らず、経営層から現場の担当者、さらに一般の消費者まで、ビッグデータという言葉は広く浸透しています。

ビッグデータはもはや当たり前の存在なのだから、改めて注目する必要性は感じない。これからはAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の時代だろう──。このように思われているのだとしたら、大きな誤解です。企業・組織でのビッグデータ活用は、まさに今からが本番なのです。

ビッグデータの活用について、様々な不安をお持ちの方も多いでしょう。この連載では6つの不安を取り上げて、それらを解消し、ビジネスの価値を最大化するためにビッグデータをどう活用していけばよいのかを、皆さんと考えていきたいと思います。

連載の主読者として、ユーザー企業(ITを活用する側の企業)でITの導入に関わる意思決定を担う、あるいは補佐する立場にあるIT部門のマネジャーやリーダーの方を想定しています。ビッグデータの定義は様々ですが、この連載では「量が多い(量が多くなると予想される)多種・多様なデータ」そのものや、これらのデータを扱う取り組みをビッグデータとします。

連載で取り上げるトピックは以下の通りです(内容は変わる可能性があります)。

不安1:ビッグデータに今から取り組むのは遅すぎないか

不安2:システム構築に多額の費用がかかるのでは?

不安3:AIやIoTの活用イメージを描くのが難しそう

不安4:既存システムをガラリと変えないと実践できないのでは?

不安5:プロジェクトマネジメントの進め方は従来通りで大丈夫か

不安6:ビッグデータを扱うエンジニアを自社で育成できるのか

今回は「ビッグデータに今から取り組むのは遅すぎないか」どうかを検証するために、ビッグデータの現状と位置付けを改めて見ていくことにします。

ブームとしては落ち着く

日経BP社のICT(情報通信技術)関連の総合サイト「ITpro( http://itpro.nikkeibp.co.jp/ )」でビッグデータという言葉が初めて登場したのは2010年のことです。実際に話題になり始めたのは2011年からで、2012~14年くらいまでは、ブームといえる状況でした。現在はブームが一段落したように感じられます。

このことは、調査会社のガートナー ジャパンが毎年公表している「ハイプサイクル」からもうかがえます。ハイプサイクルは、黎明期、「過度な期待」のピーク期、幻滅期、啓蒙活動期、生産性の安定期という5つのフェーズで、技術トレンドの状況を示したものです。

最新版のハイプサイクル(2015年10月発表、https://www.gartner.co.jp/press/html/pr20151027-01.html )を見てみましょう。ビッグデータは「過度な期待」のピーク期を越えて、幻滅期に入ったところです。期待に応えきれず、実際の導入が必ずしも進んでいない状態を表します。

「ビジネスに活用している」は37.7%

日本企業がビッグデータにどのように取り組んでいるかを見るために、最近の調査結果を紹介します。経団連(日本経済団体連合会)が2016年6月に公表した「2015年度 日本の国際競争力調査結果」( http://www.keidanren.or.jp/policy/2016/045.html )です。

調査は2016年3~4月に実施し、会員企業278社(製造業173社、非製造業105社)が回答しました。回答企業の80.2%は資本金が「50億円以上」で、日本の大手企業を中心とする動向がこの調査から分かります。

調査では「IoT/ビッグデータの利活用は自社の競争力に影響を与えるか」を尋ねています。IoTという言葉が含まれていますが、ビッグデータ活用についての質問だと捉えていいでしょう(後述)。

この問いに対し、「影響を与える」という回答が88.1%で多数を占めています(図1)。

「IoT/ビッグデータを実際のビジネスに活用しているか」という問いに対しては、37.7%が「活用している」と答えました(図2)。

「活用を検討中」は37.4%でほぼ同数、「活用の予定なし」は12.8%でした。

ざっくり言うと、「ビッグデータは競争力を高めるうえで有用だと、日本企業は考えている。ただ、実際に活用しているのは全体の半数に満たない」という結果となっています。

経団連の会員となるためには、純資産額(単体)が10億円以上、3期以上連続して当期純損失を計上していない、といった条件をクリアする必要があります。会員は、日本企業の「優等生」と言ってもいいでしょう。この点を踏まえると、日本企業全体(約382万社、中小企業庁調べ)で見た場合、ビッグデータ活用の割合は調査結果よりも低くなる可能性があります。

ビッグデータのブームは落ち着きつつある。日本企業はビッグデータ活用に取り組む意思はあるが、本格的な取り組みはこれから──。これが日本におけるビッグデータに関する現状とみなせます。

つまり、現時点で「ビッグデータに今から取り組むのは遅すぎないか」という不安を抱く必要はないということです。今からでも全く遅くないと考えるべきでしょう。

ちなみに経団連の調査では、IoT/ビッグデータ活用方法として最も多いのは「マーケティング、顧客管理」(58.7%)です。「製品・サービス開発」(53.4%)、「生産」(48.4%)、「営業・販売」(37,7%)が続いており、先行企業は様々な領域でビッグデータの取り組みを進めていることが分かります。

競争力を高めるITの中心にビッグデータがある

筆者は、ビッグデータの価値は今後、確実に高まり、企業の規模や業種・業態を問わず、真剣に取り組む必要があると考えています。ビッグデータは企業の競争力を高めるITの中心に位置しているといえるからです(図3)。

図3は、企業システムを取り巻く最近のキーワードの関係を大まかに示したものです。中央の「ビッグデータ」を取り巻くように、上側に「IoT」、横に「AI/機械学習」、下側に「クラウド」があります。IT部門にとってなじみの深い「従来システム(ERPなど)」もビッグデータの動きとは無関係ではないので、図に入れています。

「IoT」と「従来システム(ERPなど)」はビッグデータ活用のためのデータを提供する役割、「AI/機械学習」はビッグデータ分析・活用を高度化する役割、「クラウド」はビッグデータ活用のプラットフォームを提供する役割をそれぞれ果たすと考えてください。

企業でのこれまでデータ活用は、主にERP(統合基幹業務システム)をはじめとする基幹系システムに格納したデータを対象に、BI(ビジネスインテリジェンス)やDWH(データウエアハウス)といったシステムを使って実行していました。機器などに付けたセンサーなどから得たデータを扱うIoTは、企業が扱うデータの範囲をより広げているとみなせます。

従来システムのデータとIoTから得たデータ、さらにSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などから得た外部データなどと組み合わせたビッグデータをいかに組み合わせて活用するかが、企業にとっての今後の課題となるでしょう。IoTについては別の機会により詳しく取り上げる予定です。

AI/機械学習はIoTと並んで、最新ITを代表するキーワードの一つです。AIと機械学習は異なるものと捉えるべきですが、その違いは別の機会に説明するとして、現時点ではまとめて「AI/機械学習」とします。

1980年代から90年代ごろの以前のAIブームをご存じの方がいるかもしれませんが、いま話題となっているのはその頃のAIとはアプローチが異なります。ビッグデータを前提としており、大量データを統計的に学習して、その結果を利用する手法が主流となっています。この点についても回を改めて見ていきたいと思います。

クラウド(クラウドコンピューティング)は、「安く・早く・大量のデータを処理できる仕組み」を提供するものとして注目されています。ここでいうクラウドは、主にクラウドサービスプロバイダーなどが広く提供しているパブリッククラウドを指します。

クラウドを利用するメリットとして、大量のデータをまとめて収集・管理できる、分析など様々なサービスが利用できる、高い処理能力が求められる際にスケールアウト(サーバー数を増やす)が容易、などが挙げられます。クラウドはビッグデータ活用のハードルを下げる役割を果たしているといえます。

このようにIoTやAI/機械学習、クラウドなどは、ビッグデータ活用をより容易にしたり、高度化したりするのに役立つ存在と捉えられます。

◇      ◇      ◇

今回の結論をおさらいしましょう。「ビッグデータに今から取り組むのは遅すぎないか」という問いに対しては、「そのようなことは全くありません」というのが答えとなります。

いま多くのIT部門が経営層から「企業の競争力を高めるITを実現せよ」と求められています。それは、意思決定に必要なデータを収集し、分析・活用する仕組みを提供するシステムにほかなりません。競争力を高めるITの中心にビッグデータがあるのはごく自然の流れといえるでしょう。

では、企業や組織はどのようにしてビッグデータ活用に取り組んでいけばいいのでしょうか。次回は、OSS(オープンソース・ソフトウエア)をビッグデータ活用にどう生かすかを中心に説明する予定です。


ビジネス価値を最大化したいなら要確認! ビッグデータ、6つの不安を解消する

第二回連載記事:ビッグデータ活用に必須! あなたが知らないOSSの実力

第三回連載記事:人工知能・IoTの時代はもう来ている、「まだ先でいい」の発想は危険

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